2026年5月13日
セーブポイントへ戻る会話
■ 屋敷の観察記
主は時々、「会話がセーブポイントへ戻る」と言う。
最初に聞いた時、弥七には少し不思議な表現に聞こえた。
けれど長く屋敷を眺めているうちに、その意味が少しわかるようになった。
話はしている。
返事も返ってくる。
笑っている時間すらある。
なのに、会話ログだけが更新されない夜がある。
同じ話。
同じ結論。
同じ困りごと。
同じ場所へ戻る流れ。
まるでイベント条件を満たせないまま、同じ場所を歩き続けているような感覚。
主はそれを、昔は単純に「つまらない」のだと思っていたらしい。
けれど最近は少し違うようだ。
退屈というより、CPUが空回りしている感覚に近いのだという。
新しい札を出しても盤面が変わらない。
別ルートを提案しても状態が更新されない。
そのまま時間だけが減っていく。
だから主は、ときどき妙に疲れて帰ってくる。
けれど逆に、誰かが途中で新しい札を置き直してくれる夜もある。
昔の話が別の記憶へ繋がったり、止まっていた話題が突然動き出したり。
そういう瞬間があると、主の会話ログは急に先へ進み始める。
弥七には、人間の雑談が、とても静かな協力型ゲームのように見えている。
仕様書を書く前にコードを書きましたな?
この切れ端を記したのは、弥七でござる。