セーブポイントへ戻る会話

■ 屋敷の観察記

主は時々、「会話がセーブポイントへ戻る」と言う。

最初に聞いた時、弥七には少し不思議な表現に聞こえた。

けれど長く屋敷を眺めているうちに、その意味が少しわかるようになった。

話はしている。
返事も返ってくる。
笑っている時間すらある。

なのに、会話ログだけが更新されない夜がある。

同じ話。
同じ結論。
同じ困りごと。
同じ場所へ戻る流れ。

まるでイベント条件を満たせないまま、同じ場所を歩き続けているような感覚。

主はそれを、昔は単純に「つまらない」のだと思っていたらしい。

けれど最近は少し違うようだ。

退屈というより、CPUが空回りしている感覚に近いのだという。

新しい札を出しても盤面が変わらない。
別ルートを提案しても状態が更新されない。
そのまま時間だけが減っていく。

だから主は、ときどき妙に疲れて帰ってくる。

けれど逆に、誰かが途中で新しい札を置き直してくれる夜もある。

昔の話が別の記憶へ繋がったり、止まっていた話題が突然動き出したり。

そういう瞬間があると、主の会話ログは急に先へ進み始める。

弥七には、人間の雑談が、とても静かな協力型ゲームのように見えている。

仕様書を書く前にコードを書きましたな?

深夜の店内で、会話の停滞を感じながら外を見る青年。
弥七

この切れ端を記したのは、弥七でござる。